食物繊維の一日の目標摂取量とは?

食物繊維は、「第六の栄養素」とも言われるほど健康維持に大切な役割を担いますが、ほとんどの日本人が摂取量不足の栄養素です。2015年の「日本人の食事摂取基準」では、あらたに子どもの摂取基準がもうけられるなど、どの年代にも摂取がすすめられています。食物繊維を補うには、十分に野菜を食べること。必要な食物繊維の摂取量や、食物繊維を含む野菜をご紹介します。

目次

食物繊維ってなに?

食物繊維はおもに植物性の食品に含まれる栄養素

食物繊維とは人間の消化酵素では消化されない成分のこと。「消化されないから要らないもの」というわけではなく、小腸で消化・吸収されずに大腸まで届き、さまざまな働きをすることで健康維持に役立ちます。

食物繊維といってもサラサラしたものからネバネバするものまで種類があり、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない性質の「不溶性食物繊維」に分けられ、それぞれ働きがあります。

また肉類や魚介類など動物性の食品にはほとんど含まれておらず、野菜や海藻など植物性の食品を摂取することで補える栄養素です。

食物繊維はどれくらい必要?なぜ必要?

食物繊維の目標摂取量

厚生労働省の定めた2015年「日本人の食事摂取基準」では、日本人の健康づくりや生活習慣対策のために、1日あたりのエネルギー摂取量と、30以上の栄養素の目安となる摂取量が示されています。

この摂取基準においては食物繊維の目標量も定められています。18〜69歳の場合、男性20g以上、女性18g以上。70歳以上の場合、男性19g以上、女性17g以上となります。

子どもにとっての食物繊維の大切さ

さらに2015年からは、それまでにはなかった6~17 歳の摂取量が定められました。この背景には、子ども時代の食生活の成人後の健康・食習慣へ与える影響が複数報告され見直された経緯があります。子どもの頃から食物繊維をとる習慣の土台をつくっておくことが健康につながるんですね。

子どもの摂取量は、大人の基準をもとに体重に応じて下記の量が定められています。

6〜7歳…男性11g以上、女性10g以上
8~9歳…男性12g以上、女性12g以上
10~11歳…男性13g以上、女性13g以上
12~14歳…男性17g以上、女性16g以上
15~17歳…男性19g以上、女性17g以上

大人の摂取量が基準となり、年齢ごとの平均的な体重に応じた目標値が示されています。

食物繊維はなぜ必要?

食物繊維がどうして必要なのかというと、人間の健康を維持するさまざまな働きを担うからです。代表的な働きでは、スッキリを促すほか、大腸内のビフィズス菌・乳酸菌など腸内細菌の働きをサポートすることで、身体の環境を整える作用も知られています。

食物繊維は健康維持に役立つ

そのほか食習慣が乱れがちな中高年の健康維持に役立つ働きがわかっています。食事のバランスが偏っている方、外食が多い方は、老若男女問わずしっかりととりたい栄養素です。

日本人のほとんどは食物繊維が足りていない

昔と比べて食生活のスタイルが大きく変化した現代の日本人は、50年前と比べ食物繊維の摂取量が減っていて、ほとんどの年代で目標量に届いていない状況です。

平成29年の「国民健康・栄養調査報告」において、食物繊維の摂取量は20歳以上の平均が1日約15gと報告されています。中でも若い世代の摂取不足が目立ち、20〜29歳では12.3g、30〜39歳では12.8gで目標量に大きく達していません。不足しがちなものと意識して、積極的にとりたい栄養素なんです。

食物繊維を含む野菜のチカラを活用しよう

子どもの頃からしっかりととることが大切で、スッキリ作用で身体の調子を整えたり、体調の維持を助けたりとさまざまな働きを持った食物繊維。では野菜にはどのくらい含まれるのでしょうか?

日本食品標準成分表(2015年版)に掲載されている「野菜類」の中から、食物繊維量を多く含む野菜(一般的なもの)をピックアップすると、100gあたりの含有量は、らっきょう20.7g、しそ7.3g、グリーンピース7.7g、ごぼう5.7g、モロヘイヤ5.9g、枝豆5.0g、オクラ5.0g、ブロッコリー4.4gとなります。

他方で日本人が多く消費している野菜の食物繊維をみると、だいこん(皮つき)1.4g、たまねぎ1.6g、キャベツ1.8g、はくさい1.3gとなります。野菜によって食物繊維は多いもの少ないものさまざまですので、いろんな種類をとるように心がけたいですね。

野菜の「捨てる部分」に多く含まれます

昔から「野菜の皮には栄養が多い」と言われます。にんじんなど皮ごと食べられる野菜は痛んでいる部分とヘタだけを取り除いて調理する方もいますよね。

野菜に含まれる食物繊維の量を、皮つき・皮なしで比べると、「皮つき」野菜のほうが少しだけ多いことがわかります。たとえばにんじんの場合、「皮つき」100gあたりの食物繊維は2.8g、「皮むき」は2.4gと「皮」に食物繊維が多く含まれていることがわかります。

では皮のほか、一般には食べる習慣のない豆の「さや」、コーンの「芯」にはどのくらい含まれているのでしょうか。枝豆とコーンの可食部と、捨てられる部分の100gあたりの食物繊維量を比べると、枝豆は可食部が5.8g、さやが12.0g。コーンの場合は可食部が5.6g、芯が15.3gとなります。

このように野菜の種類、廃棄部の部位によっては、捨てられる部分に約2~3倍もの食物繊維が含まれている場合があります。これらを少しでも栄養として生かせたらいいですよね。

十分な食物繊維を摂取するコツ

なるべく野菜は「まるごと」食べる

栄養価の高い「野菜の捨てる部分」を活用すれば、野菜ゴミの量はダウン、食物繊維の量はアップできます。

かぼちゃなら煮物は皮ごと。皮が余る時は細かく刻んでかき揚げにする、ワタはポタージュにする。みかんのスジは取らない。ブロッコリーは芯の表面の固いところだけ取り除いて薄く切って使う。ほうれん草は根元も切り落とさずに食べる…。日々のちょっとした心がけが食物繊維アップにつながります。

野菜は1日350gを目安に食べる

「何をどれだけ食べたら1日の食物繊維を摂取できるの?」とピンとこない方もいるでしょう。覚えやすいのは「野菜1日350g」を心がけること。ごはんなど他の食材とあわせて野菜350gを食べることができれば、おおむね1日分の食物繊維が摂取できます。

ふだんの食事なら小鉢に入った野菜のおかずが「約70gの野菜」と覚えると便利です。ほうれんそうのお浸し、具沢山のおみそ汁、かぼちゃの煮物など1日で小鉢を5つとるように意識しましょう。子どもは大人の摂取量を基準として体重に応じた量と考えてください。

食物繊維の多い主食に替える

また野菜だけで1日の食物繊維を補おうとするのは難しいことなので、ごはんやパンなどの主食を、食物繊維が多く含まれる食材に替えるのもおすすめです。たとえば白米を、玄米や五分づき・三分づきのお米に替える方法。100gあたりの白米と玄米の食物繊維量を比べると白米が100gあたり0.5g、玄米が3.0gです。精製されていない穀物は一般的に食物繊維を多く含みます。

このようなコツをご自身の食生活に無理なくとりいれて、毎日少しでも食物繊維を増やせるように工夫しましょう。

部位100g当たり栄養分析値(当社調べ)

※横にスワイプすると表をスライドできます。

野菜 100g当たり栄養成分 構成比 食物繊維 g/100g カルシウム mg/100g カリウム mg/100g ビタミンA μg/100g ポリフェノール mg/100g
コーン 33% 15.3
67% 5.6
枝豆 さや 45% 12.0 138 314 80
55% 5.8 84 691 60
ビーツ 10% 4.3 39 210
果肉 90% 2.2 13 80
パプリカ 種、わた、へた 12% 7.2 34 711 20 120
果肉 88% 1.3 7 261 90 30
えんどう豆 さや 47% 7.1 95 50
53% 4.2 25 30
にんじん 10% 4.5 51 759 613 80
果肉 90% 2.8 26 315 807 10
かぼちゃ 種、わた 16% 11.7 22 726 259 70
果肉 84% 2.5 17 442 146 30

監修 : 尾上 雅子(管理栄養士)

大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。